研究概要 |
癌化学療法に伴う味覚識別能の実態を明らかにする目的で、癌化学療法が治療の主体となる血液・造血器腫瘍疾患患者で化学療法を受けた入院中の患者36名について治療前・治療中(4日目)・治療後(治療後10日目)に試薬滴下法による味覚識別能の測定を行った。測定方法は味覚検査用試薬(テ-ストデスク)の4種類(甘味・塩味・酸味・苦味)をそれぞれ舌上(鼓索神経支配領域)にマイクロピッペットで,2-0マイクロリットル滴下し,正しい回答が得られた濃度をチェックする.評価は,蓑原氏の方法に従い、以下の結果を得た。 1.味覚識別能の平均値は、甘味において治療前に比べ治療中に有意傾向が認められ塩味において治療中に比べ、治療後に有意差(P<0.05)が認められた。 2.性別では女性が男性に比べ甘味、苦味が有意に敏感であり、化学療法の味覚への影響は女性の(甘味、塩味、酸味)に強く認められた。 3.癌化学療法剤の種類では、アルキル化剤の使用の有無と治療後の苦味、抗生剤の使用の有無と治療後の塩味、副腎皮質ホルモン剤の使用の有無と治療中の甘味、苦味、治療後の味覚識別能に有意差が認められた。
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