研究課題
基盤研究(C)
妊娠早期の自然流産の原因としては染色体異常がもっとも多く50〜60%を占めるといわれ、その他に胎盤異常、胎児の先天異常、内分泌異常等があげられているが原因不明のものも存在する。流産遺残物を観察すると脱落膜に多数の多核白血球浸潤を示す症例があり、ある施設での1年間を調査したところ73例の自然流産のうち16例21.9%に多核白血球浸潤の病巣を認めた。細菌感染の流産を引き起こすメカニズムとして、インターロイキンの産生、プロスタグランチンの誘導、子宮の収縮の連鎖が想定されている。しかし多核白血球浸潤は炎症像としてばかりでなく、心筋梗塞のような組織の壊死の存在でもみられるものである。今回、流産遺残物にみられる多核白血球浸潤を示す炎症像と細菌感染の関連、及び上行性細菌感染を誘導すると思われる性生活の形との関連をみる目的で流産遺残物の組織学的検索に加えて、細菌の存在、アンケートによる性生活のあり方を調査した。現在までの結果、多核白血球浸潤陽性例でグラム染色(細菌を組織標本で染める)陽性は78.3%(18/23)、多核白血球浸潤陰性でグラム染色陰性は87.5%(21/24)で組織標本での多核白血球浸潤と細菌感染は強い相関を示していた。細菌の定量的培養を行い得たのは現在のところ14例で、4例に炎症像を認めいずれにも多数の細菌が培養され、黄色ブドウ球菌、大腸菌、Bifidobacterium sp.膣常在菌であるLactobacillus sp.が検出された。次年度は、細菌の定量まで行う症例を50例ほどまでに増やし、アンケート調査の結果を加え最終的検討を行う予定である。
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