病院や老人福祉施設では、老人患者の安全確保や治療・看護上の必要性から身体を抑制することがあるが、身体抑制は患者の身体・精神に悪影響を及ぼすのみならず、家族や看護・介護者にとってもストレスとなる。今年度は、身体抑制の実態、および身体抑制が必要な状況と必要性に関する看護・介護職員等の意識を調査した。 調査対象施設は、A特別養護老人ホーム(入所定員109名)、B老人保健施設(同55名)、C老人保健施設(同100名)、D病院(99床)の4施設である。各施設での観察日の身体抑制状況は、Aホームでは約20%の入所者に対して身体抑制をしていた。主な抑制方法は車椅子用安全ベルトで、ほかに、ジャンプス-ツが2名、ひもによる手の抑制が1名いた(抑制方法別は延べ数、以下同様)。B・C施設では7〜8%の入所者に車椅子用安全ベルトを使用していた。D病院での身体抑制は30%弱で、そのうち半数はジャンプス-ツ着用で、指なし手袋7名、ひも5名、肘関節固定具2名であった。上記にはベッド柵による抑制は含んでいない。 身体抑制の必要性に関しては、転倒・転落の防止、カテーテル・チューブ類の抜去防止、創部の保護、異常行動・危険行為の防止などの17項目について、「全く必要性がない」から「極めて必要性が高い」の間の5段階で回答する調査票を作成した。4施設の看護婦19名、看護補助者3名、介護職員54名、生活指導員3名、家族1名の計80名から回答が得られた。多くの項目で、病院、老健施設、特養ホームの順に必要性が高いという傾向があった。看護婦と看護補助者・介護職員とを比べたととき、身体抑制の必要性が高いとする人が看護婦の方に多い傾向があった項目は「不穏状態による危険防止のため」と「徘徊防止のため」であり、逆に看護補助者・介護職員の方に多い傾向があったのは、「不安定な歩行による転倒防止のため」であった。
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