本年度は平成8年度の質問紙による調査結果に基づいて第二次調査を実施した。調査の目的は、(1)質問紙法によって発見された成人初期のリスク者の問題と対処行動、(2)得られた支援の状況を調べ、この時期における健康上の問題と有効な支援の方略を明らかにすることであった。 対象と方法:一次調査の質問紙の回答から、(1)健康上のリスクが高いと考えられるリスク群、(2)対照群として明らかな問題のない群を親側と子ども側から抽出して調査対象とした。方法は面接法であり、家庭訪問法を原則とした。面接の内容は(1)親の子育てを含む生活上の神経的負荷感とその経過、(2)その時期に得られた支援、(3)成人初期の親子関係、(4)子どもの健康上の問題と親の発達的課題などであった。 結果:(1)二次調査の予備調査として行った質問紙による調査の結果、子ども14名、父親9名、母親27名から回答を得ることができた。この結果、母親が子育てを含む精神的負荷感の最も大きい時期の支援者は、(1)夫、(2)自分の親、(2)先生、の順であり、医療・保健関係者は少なかった。父母の医療関係者にもつイメージは医師:(1)こわい、(2)不安、(3)尊敬、であり、看護婦:(1)やさしい、(2)安心・信頼、(3)身近、であった。面接調査の結果においても、精神的負荷感の最も大きい時期の支援者に医療・保健関係者は含まれていなかった。 (2)子ども2名、父親3名、母親25名、合計30名のものにつき、現時点での消息を詳細に把握できた。その結果、父母の情報から子どもに健康上の問題のある者の面接が実施でき、また、子どもに問題はないが親に健康上・生涯発達上の問題のある者は、母親25名中20名、父親3名中3名あった。 (3)子どもの回答結果から、この時期に父親との関係が不良な者4名、28.6%、母親との関係が不良な者2名、14.3%であった。 これらの結果は今回の質問紙の内容や面接法が成人初期における子どもおよび中年期の親の潜在的な健康・発達上の問題発見と支援方法の手がかりとなることを示唆していた。
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