研究概要 |
在宅障害老人の介護者の世間体と介護負担感およびサービス利用との関連性を検討するために,本年度は世間体スケールの開発を目的とした.従来のスケール(12項目)は世間体の否定的側面に偏った傾向がみられたため,肯定的側面も加味し,本スケール開発に先立ち実施したインタビューのデータをもとに新たに14項目を加え「規範」「同調」「逸脱」を構成概念とする26項目を設定した.調査対象は長野県A市の在宅介護者397名,回収260名(回収率65.5%).このうち世間体スケール全項目に回答した179名について分析した.(1)分析対象者の属性:年齢の平均は60.7(範囲29-89)歳,性別は男性68名,女性110名.家族構成は夫婦のみ33名,2・3世代同居127名,その他17名.出生地は農村部131名,住宅地34名,商業地11名.現在の住居地が農村116名,住宅地50名,商業地11名,職業は無職65名,農業43名,会社員28名,自営業21名,その他19名,要介護老人との間柄では配偶者49名,嫁60名,子51名,その他17名.要介護老人の精神状態は痴呆有り81名,無し90名,日常生活状況ではJランク2名,Aランク34名,Bランク59名,Cランク81名.(2)世間体スケールの妥当性・信頼性の検討:26項目のうち反応分布の偏りが80%以上の1項目,尺度得点と項目得点の単相関係数0.40以下の6項目を削除し,19項目で因子分析を行った.その結果,因子負荷量が0.40以下の2項目を削除し,「逸脱」「気にする関係」「家意識」「同調」の4因子が抽出され(累積寄与率50.6%)構成概念妥当性が確認された.信頼性については,17項目の尺度得点と項目得点の単相関係数は0.43-0.74,Cronbachのα信頼性係数は0.88と高値を示し内的一貫性がみられた.来年度は,北海道室蘭市,滋賀県水口町等で調査協力の承諾を得ており,世間体と介護負担感,サービス利用との関連性を検討する.
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