研究概要 |
本年度は、昨年度の調査により開発、修正した世間体スケールを用いて、在宅障害老人の介護者の世間体と介護負担感およびサービス利用との関連性を検討するための本調査を実施した。調査地は北海道室蘭市、滋賀県水口町および余呉町、沖縄県浦添市および金武町である。これまでに、水口町の調査は終了し、質問紙は155名から回収され、このうち世間体スケールおよび介護負担感スケールの全項目に回答の得られた80名について分析した。分析には統計解析ソフトSPSSを用いた。世間体尺度得点とサービス利用に対する抵抗感とは関連性が認められ(r=0.31,p<0.01)、また世間体尺度得点とサービス利用との関係で有意差がみられたのはショートステイ・ミドルステイであり、サービスを利用していない介護者のほうが世間尺度得点が高かった(t=2.00,p=0.05)。しかし、介護負担感との間に有意差は認められなかった。水口町は24時間巡回型訪問看護・介護の導入をはじめ、積極的に在宅高齢者対策が展開されており住民の保健・福祉意識が高いためか、地域的には世間体の強い特性をもっているが、サービスを利用することが当たり前のこととして住民の意識の中に規範化されつつあり、それが介護負担感を増強する要因として働くことが少なく介護が継続できているのではないかと推測される。本調査の結果より、看護専門職によるコミュニティへの保健・福祉意識を高めるアプローチは介護負担感を軽減できる可能性を含んでいることが示唆され、来年度は本年度データを収集した他の地域における関連性について分析し検討する。 なお、改訂版世間体スケールと介護負担感および保健・福祉・看護サービス利用との関係については、本年度12月に開催された第17回日本看護科学学会で報告した。また水口町の分析結果は日本看護科学学会第3回国際看護学術集会において発表する予定である。
|