生涯発達的視点から人にとっての「たのしみ経験」の意味と内容について以下のように量的質的検討を行い考察した。 1. 「たのしみ経験」について、量的検討の方法、および内容の分類枠組みが、生涯を通して共通に適用できることを実証し、方法論的検討をおこなった。 2. 青年期(226名)、中年期(226名)、老年期(129名)を対象に質問紙調査を行い、各対象者の各時期別に「たのしみ経験」の内容について検討した。また「たのしみ経験」世代間比較を行い、その共通性と相違性について考察した。 3. 東京と農村地域の中学生(224名)を対象とし、描画を含めた「たのしみ経験」に関する調査を行い、中学生のたのしみ経験と、性差、地域差について検討した。 4. ダウン症児の親(65名)を対象とし質問紙調査を行い、人生における大きな出来事としての障害のある子どもを持つことが、「たのしみ経験」にどう関与するか検討した。 5. 企業従業員(20代から50代まで、計238名)を対象とし質問紙調査を行い、働くことと「たのしみ経験」との関連について検討した。 6. 3歳児の親を対象に、対象者および3歳児のたのしみ経験について、その内容と親子の関連性について検討した。 以上の結果から、「たのしみ経験」は性差、世代差、地域差があり、また人の発達段階にそって変化すること、しかし同時に各世代、年代に共通した要素から成り立っており、また人の精神的健康に関連することから、精神的健康の一つの尺度として用いうるのではないかという事が示唆された。
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