平成7年1月17日淡路の南淡部を震源地とする阪神・淡路大震災が発生し、死者6300名以上を出す未曾有の大災害となった。この予知不可能な災害の体験から、我々は自然災害や人為災害に対応可能な「災害看護学」の体系化ならびに看護教育プログラムの開発の必要性を認め、本研究に着手した。 我々の大学における救援活動によって明らかにした健康問題が、震災後2年たった現在でも仮設住宅の住民、特に単身者と高齢者には顕在化していた。中でも慢性疾患(糖尿病、肝臓疾患など)の悪化、慢性アルコール中毒症が多発していた。かつ、低収入と住居環境の影響から食健康生活の問題を指摘できるが、それらの課題克服は現状では不可能に近いことが判明した。 震災における看護の危機管理に関して、震災を受けた病院の看護管理者へ災害時の危機管理の実際と役割に関する面接調査を開始した。調査途中であるが、現段階で2つの課題が提示された。 1.看護職者が災害時に判断・指揮・統括できる自己完結型の人材育成が看護基礎教育や卒後継続教育の中で行われることが急務の課題である. 2.災害発生時の混乱状況の中での活動において、看護職者は他職種との連携が図れる、即ちコーディネーションの役割を果たせる職種であることが指摘された。 人為災害の1つである誘拐、1996年8月に発生したメキシコでの邦人誘拐事件についてのリスク回避に関する研究も併せて検討を開始した。
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