研究目的は、批判的内省研究(Critical reflective research)により、専門看護実践者に必要とされる共同意思決定を促進することであった。平成8年度は、以下の3つの内容について明らかにできた。 ・共同意思決定の困難な場面認識 ・共同意思決定についての自己内省 ・批判的内省研究の確証性 対象は、K大学研究科修士課程癌看護学専攻の4名を対象とした。対象者は、研究者の1名によって行われる学習プログラムと共同意思決定の困難な場面に焦点を当てた事後学習会に参加した。学習プログラムは、自己内省を促すように構成され、1回90分として1カ月に8回行われた。学習会では、テープレコーダーが使用された。録音記録の書き起こしから、2人の研究者の意見が一致した内容が抜粋された。 確証性を示すために、研究者と実践者が主観的な相互の了解に至った議論過程が分析された。 結果として、看護婦と患者の共同意思決定の困難な場面として、「意識障害が急に進む場合」、「医療者と患者との疾病回復期がずれている場合」などであった。自己内省の内容では、「看護側からのアプローチがないと共同意思決定はすすまない」「常に、人権や倫理を含めて考える」などであった。批判的内省研究で、研究者と実践者は共同意思決定の困難な場面について、相互了解できた。研究者は事例から具体的的改善方法について示唆でき、一方、実践者は改善のために自ら実践できる見通しを持てた。 確証性は逐語記録から意味内容を抽象化して、2名の研究者の意見が一致した内容を示すことで可能であった。
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