意識障害患者を対象に、同一体位保持中および体位変換後の皮膚血流量、指先脈波、動脈血酸素飽和度を5時間持続的に観察した。同時にさまざまな刺激に対する皮膚血流量の変化を観察した。体位変換は2時間毎に患者の担当看護婦が実施した。対象は14〜76歳の意識障害患者4名(1名は2回測定)、声をかけても明確な反応は全くない意識レベルで、障害の原因は脳出血、脳梗塞、クモ膜下出血によるものである。 測定部位は左手第2指の指腹部と肩峰の2箇所で、指先は情動の影響が表れやすい、肩峰は側臥位時に圧迫され、便尿で汚れない部位のため選択した。測定時間が長時間であり、データが膨大なため解析に多くの時間を要し現在処理中である。現時点で分かった結果を以下に要約する。 A.同一体位保持中、体位変換後の皮膚血流量の変化 (1)皮膚血流量は、4名の患者とも次のような傾向の変化を示した。 ・体位変換後、指先部の血流量は体位変換前より2〜3倍程度増加するが、反対に肩峰部の血流量は減少する。45〜50分経過した頃、肩峰部の血流量は一時的に1.5〜2倍増加するが60分過ぎると減少した。体位変換して1時間45分経過した頃、血流量は再び増加し始めた。一方指先部の血流量は、体位変換直前には減少がピークになった。2回目の体位変換後もほぼ同様な傾向がみられた。 B.刺激に対する皮膚血流量の変化 (1)呼吸器を装着し殆ど反応がみられない14歳の患者の指先部血流量は、手を握ったり、声をかけたりしたとき、人によって異なる変化を示した。特に母親による刺激に対しては血流量が20%前後減少するが、父親の声かけや身体への接触に対して30〜60%程度増加する傾向を示した。因みにこの患者は健康時父親を恐がっていたそうである。2回目の測定時もほぼ同様な傾向を示した。 他の3名の患者の指先部血流量は、家族による刺激に対して他の人より大きな変化がみられた。
|