経済的側面から院内感染防止策を検討するために、平成8〜9年度に院内感染による感染症の検査・治療および感染防止の管理に要する費用を調査した。その結果、MRSAによる院内感染と判定された15名の患者のほとんどが肺炎の治療目的で入院し、MRSA肺炎を併発した患者であった。従って、MRSA感染症のみに要した検査・治療費を算出する為には、通常の肺炎平均治癒期間とそれに要する費用を求める必要があることが明らかになった。そこで、今年度は通常の肺炎平均治癒期間とそれに要する検査・治療費を明らかにするために、国内・外の文献調査及びMとY病院における実態調査を実施した。現在、そのデータの処理中である。3月現在の結果では、1)Y病院における通常の肺炎平均治癒期間は約9日で、それに要した検査・治療費が約56万8550円であった。2)M病院においてMRSA肺炎を併発した15名の患者のうち4名における平均治癒期間は約70日で、それに要した検査・治療費が約136万6207円であった。3)従って、MRSA肺炎のために余分にかかった検査・治療費は一人当たり79万7657円である。 今後の調査及びデータ処理としては、M病院における通常の肺炎の平均治癒期間とそれに要した検査・治療費を算出する。その結果はY病院における通常の肺炎平均治癒期間(約9日)よりも長いと予測されるので、要因分析を含めて比較検討する。更に、インターネットによって米国のDRG制度(490余りの診断群)における肺炎の治癒期間及び検査・治療費を調査して、その結果とも比較した後に、成果をまとめて報告する。
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