研究概要 |
繊維を溶液としてから,セリシン粉末、絹フィブロイン粉末、羊毛ケラチン粉末を調整した。廃液に含まれる水溶性のセリシンは架橋して用いた。これらのタンパク質素材について有機化合物(N,N-ジメチルフォルムアミド、o-ジクロルベンゼン、ジオキサン、デカン、エタノール)の吸着量を求めた。吸着時間は20h、温度は25℃を主とした。その結果、全ての蛋白質について差異がみられた。特に、エタノールの吸着量が多いことが注目され、アルコールの水酸基と蛋白質のアミド結合との水素結合的な相互作用を考えた。そこで、メタノール,エタノール,1-または2-プロパノール,1-ブタノールの吸着量の比較を行った。メタノールの吸着量が最も多いが、バリンには2-プロパノールがよく吸着することがわかった。吸着とアミノ酸残基との関係の規則性を知るために,一連のポリペプチドを合成して,同様の吸着を検討した。その結果。グリシン,アラニン,バリン,ロイシン,グルタミン酸エステルなどのポリペプチドの違いが,数種の有機化合物またはアルコールのみの吸着量から判別できることがわかった。一方,タンパク質および合成ポリペプチドについて染料の吸着を検討した。タンパク質の構造の相違による吸着傾向の差違は認められた。蛋白質の一次構造のみならず、二次構造(分子形態)も重要な因子であると考えた。さらに,8種の代表的なアミノ酸の水溶液を絹フィブロインに通過させると,リシンがよく吸着することがわかった。これらの,吸着の基礎科学的データを基に,吸着による分子認識の規則性を考察し,吸着による混合物の分離の可能性を検討している。
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