研究概要 |
本研究では、「親の緊急的な保育要求を充足することを目的に制度化された一時的保育」に対する乳幼児をもつ父親と母親の理解度を調査するとともに、一時的保育を利用した子どもの観察及びこの制度を利用した親と保育者に聞き取り調査を行った。 その結果、この制度を肯定する者は母親の方が有意に多く、否定する者は父親の方が有意に多く、この差異は制度に対する理解に起因していた。一時的保育の利用料金は、親が日常的に行っている家庭保育の対価と考えることができる。調査対象地域で設定されているものより高額の料金を想定した者は、母親よりも父親の方に有意に多く、母親の方が家庭保育の対価を低く評価していることが示唆された。一方、利用開始年齢については、父親の方が現行年齢よりも遅い開始を望ましいとし、母親はもっと早い年齢からの開始を望んでおり、両者の意識に顕著な差異が認められた。また、この制度を利用することへの不安は、父親と母親の7-8割の者は持っておらず、特に母親にその傾向が顕著に認められた。また、人口15万に満たない調査都市における一時的保育の年間延利用者数は約3,200人であり、制度的意味が非常に大きいことが明らかになった。 短時間における母子分離により子どもが体験する不安の解消には、保育者との長時間に渡る身体的接触が有効であることが観察された。しかし、すべての保育園に一時保育の専任保母が用意されているわけではなく、利用する園により子どもの負担度に非常に大きい差異があることが示唆された。このことは、保育内容及び保育者の資質における差異も含んでおり、今後さらに検討する必要がある。利用する親にとっては、保育内容や保育園の子どもの様子に関心があるものの、緊急的対応としての意味の方が大きく、保育内容等に対する要求を明確にするまでに至っていないのが実態であった。
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