本研究では、親の緊急的な保育要求を充足する方法の1つとして制度化された一時的保育を利用する時に子どもが経験する親からの分離体験が、子どもの生活に与える影響を明らかにすると共に、制度を利用する両親の制度に対する理解・評価などを調査した. 対象児及び対象者は、生後4か月〜12か月児とその母親及び就学前の子どもをもつ両親である。なお、12か月児は、3歳になるまで継続研究の対象とした. 母子分離体験に伴う不安が、対象児の顔面皮膚温度に影響を与えることが認められた.しかし、顔面皮膚温度は、子どもの泣きなどによる影響が大きいため、さらに詳細に分析する必要がある。 また、子どもが愛着行動等を表出するまでの潜時から子どもの情緒的体験を推測した.母親への愛着行動は、2・3歳児より1歳児で有意に早く表出するが、表出継続時間は、加齢に伴い有意に短縮することから、母子分離による子どものストレスは発達に伴い軽減することが明らかになった。一方、他者への愛着行動等の表出は、いずれの年齢でも母親に比して有意に遅かった.しかし、他者にも愛着行動等を表出することから、母子分離に伴う子どものストレスを軽減するために他者の存在が有効であることが示唆された. さらに、一時的保育制度を肯定する者は母親に有意に多く、否定する者は父親に有意に多く、この差異は制度の理解度に起因していた。母親の方が父親より家庭保育の対価を低く評価し、保育開始年齢について父親は遅い開始を望ましいとし、母親は早い年齢からの開始を望んでおり、両者の意識に顕著な差異が認められた。 以上の結果から一時的保育を利用する子どもが、保育者を愛着対象とするような保育環境の設定と利用者である親に保育内容等の情報を十分に提供する必要性が示唆された.
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