研究概要 |
食品中の油脂は光や酸素、加温などに晒されることが多く、健康への害が懸念されている。特に、食のサービス化が進み、調理から食するまでの時間的空間的な問題がある。脂質の酸化で2次的に生じる低分子不飽和アルデヒド類は反応性が高い。特に4-ヒドロキシ2-ノネナ-ル(HNE)は生体内でも細胞毒性の高いアルデヒド(LC_<50>25μM)であり、食品中の有無が問題である。そこで、生体系で確立されたHNEの免疫化学的定量法(ELISA法)を用いて、食品系の定量法を確立し、安全性の評価に資することを目的に検討した。まず第1に、油又は食品中から、HNEの抽出法の検討をした。HNEはアルコールや水に可溶なので、油を対象とする場合は、油とエタノールの割合を検討し、1:2(v/v)に混合し、その中から100μLをマイクロプレートのウエルに入れ、食品中の脂質の場合は食品を粉砕し、酢酸エチルで抽出した抽出物とエタノールを同様に1:2(v/v)混合し、用いた。8種の市販食用油を180℃1,2.5,5hrs加熱した場合、HNEは時間ととも増加したが、油の種類により著しく差があった。5hrs加熱で、ハイリノールサフラワー油は約270nmol/mloilのHNEが生成し、特に、n-6系油で生成量が多かった。しかし、市販フライ食品中のHNE量は50nmol/mlと5hrs加熱油の1/5程度であった。HNEは反応性が高いので、フライ中に揚げ材料の食品成分と反応し、減少した可能性が高いが、定量操作時に一部分解したことも考えられるため、今後、さらなる検討が必要である。モデル的にリノール酸を50℃,200hrs劣化させると1.5μmol/mlのHNEが生成したので、この条件を用いて、HNE生成抑制成分の検討も行えることが示唆された。さらに、今後、食品中にどの程度HNEが含まれると生体傷害を起こすかなどについての検討も必要と考えている。
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