本研究の目的は、腸内醗酵が種々の消化器症状を惹起するという仮設を証明することである。本年度の研究では、腸内醗酵されやすい日常的な食物を特定し、腸内醗酵が活発なときの消化器症状や消化管機能を検討した。 1)腸内醗酵されやすい日常的な食物の特定:他大学家政学部学生14人を対象として、腸内醗酵の指標として呼気中水素を1時間毎に測定するとともに食事調査をした。食事内容と呼気中水素の関連の詳細については現在集計中であるが、腸内醗酵の原因食物の一つである食物繊維についてみると、オリゴ糖類は活発な腸内醗酵をもたらすが、セルロースあるいは合成ポリデキストロースなどでは腸内醗酵は少ないことがわかった(論文1)。このオリゴ糖を多量に含む大豆を投与して若年者と高齢者の呼気中水素を測定した。小腸輸送機能は両者の間に差がなかったが、腸内醗酵は若年者の方が盛んであった(論文2、3)。 2)腸内醗酵が活発な時の消化器症状および消化管機能の検討:14人を対象に3日間にわたり同一試験食を摂取させ、1時間毎に呼気中水素を測定するとともに、自覚症状調査を行った。呼気中水素は満腹感や膨満感と関連があったが、腹鳴やガス症状とは有意な関連はなかった。インピーダンス法により高脂肪食摂取後の胃排出ヲ測定し、血中CCKおよび消化器症状を測定した。インピーダンス法では脂肪による胃排出の遅延が観察されず、脂肪の胃内での分離が推定された。胃排出と血中CCKおよび消化器症状との関連については現在集計中である。 次年度は、今年度の残りの集計を完成させるとともに、消化器症状を伴う疾患や状態と腸内醗酵との関連を検討する。
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