本研究の目的は、腸内醗酵が種々の消化器症状を惹起するという仮説を証明することである。本年度の研究では、消化器症状を引き起こす状態と腸内醗酵との関連、および、腸内醗酵が活発な時の消化器症状について検討した。また、消化器症状の発現要因を胃の機能から検討する目的で、インピーダンス断層法(EIT)による胃排出測定法および胃電図(EEG)についての基礎的検討を行った。 1)EITによる胃排出の測定:試験食に液体食としてコンソメス-プ、固形食としてハンバーグを用いた。いずれも胃排出の測定が可能であった(日本消化器病学会等で発表)。 2)冷刺激のEEGへの影響:手への冷水刺激、および、冷たい牛乳の飲用により電位差が増加した。 3)運動時の消化器症状:6名を対象に軽度および中〜強度の運動を負荷し、食事摂取と消化器症状との関連を検討した。食事摂取直後に運動を行うと嘔気が出現した。その他の諸症状については、現在解析中である。 4)月経と消化器症状:月経周期と小腸通過時間について、12名を対象に液体食(牛乳)および固形食(五目豆)で比較検討した。月経により、小腸通過時間は液体食でも固型食でも変化がなかった。しかし、牛乳を冷たくすると、黄体期の小腸通過時間が短縮した(論文3、5)。 5)牛乳不耐症:牛乳を日常的に摂取する学生は95%以上であった(平均200ml)。呼気中水素の測定から、98%以上が乳糖不耐と診断された。毎日1L以上牛乳を摂取する学生に牛乳の摂取を1か月にわたり中止させたところ、牛乳負荷による呼気中水素の上昇の程度が減少した。
|