解体木材の再利用を目指して、一般市民、解体業者、施行業者の意識調査と解体材の強度試験、文献による再利用事例を調査した。一般市民280票の調査結果からは、再利用に肯定的な人は約7割で、「経済的である」「環境保護に役立つ」「愛着がある」と意識しているのに対し、否定的な人は、「どこから来たかわからない」や「耐久性や強度に不安」など材料の性能に不安を抱く人が多かった。この調査結果を受けて、築30年から243年の9棟の建物から得た解体木材の強度性能試験を行った。試験を開始する前に、得られた材料を光学顕微鏡で樹種鑑定した結果、7樹種が確認された。強度試験はJISに準拠した曲げ強度、縦圧縮強度、を中心とし、縦圧縮に関しては実大試験も行った。その結果、どの樹種の古材も新材の強度性能に劣るものは少なく、腐朽や虫害や大きな欠損部がなければ、充分使用に耐えると判断した。解体業者、施行業者の調査では、業者は経済的な理由から機械解体の方法を選択しているが、その後の分別が困難で、処理費用が負担となっている状況が窺えた。施行業者の多くは依頼があれば古材利用の工事を引き受けると回答しているが、工費や工期の制限がなければという条件をあげる業者が多い。古材利用上の問題点としては、手間や技術、古材の形状などの他「供給が不安定」「ルートがない」など、古材市場が形成されていない点が問題であることが浮き彫りにされた。解体木材再利用の事例調査では、解体木材の再利用には、解体される建物の工法、材料の質、施主や設計者、施行業者の意識とかかわりが大きいことがわかった。再利用部材の解体前の建物は、多くが伝統的工法による民家であり、これらは、部材断面が大きいことに加え木材に金物など異物の付着が少なく、解体、再利用されやすいと考えられる。使用方法は以前の用途のまま使用されることが多いが、梁などの大きな部分は製材して用途を変更している事例も多かった。
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