本研究は平成8年度、9年度を研究期間とし、今年度は最終年度にあたる。平成8年度は夫婦を対象とする生活時間調査を実施し、その基礎集計までを実施した。今年度は昨年度で実施した調査の詳細な集計・分析を行い研究のとりまとめをした。昨年度得られた主要な知見を含め、本研究で得られた主な研究成果と今後の展望について、次の四点にまとめるとができる。 1 昨年度の研究により、家事労働の社会化の実態および家事労働の社会化の程度と家事労働時間との関連が明らかになった。外部サービスの利用は、有職者の方がよく利用するものもあるが、職業の有無で大きな違いがないものもある。家事労働の社会化によって家事労働時間が短くなる場合もある。 2 家事労働の社会化に対する夫と妻の態度を「家事サービスの利用」、「家事労働の手抜き」に対する意識からとらえた。家事サービス利用に関する態度項目では妻も夫も家事労働はサービスに頼らず家族の手によって行いたいと考えるものが多い。家事労働の手抜きには夫より妻の方が肯定的である。 3 家事労働の社会化に対する態度と家事労働時間との間には関連がある。家事労働のサービス利用に積極的な考え方をもち、家事労働を省略しようとする者の方が家事労働時間は短い。 4 以上の成果をまとめると、家事労働の社会化は、就業形態のように家事労働時間に対して明瞭な影響を与えるものではないが、家事サービス利用の有無、家事労働の社会化に対する態度をとおして家事労働時間に影響を与えている側面があることが明らかになった。今後の研究の展望としては、世帯の家事労働総量を規定する要因の一つとして、家事労働の社会化を探求することをあげることができる。
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