本研究の目的は、個人のジェンダー規範の成立と地域社会に存するジェンダー規範との関係を究明することにある。具体的には、(1)日本の特定地域社会内に、どのようなジェンダーが規範化されモデルや制度として定着しているのか、また(2)そこに暮らす個々人は、その中でどのようなジェンダーを形成し内面化し、さらには規範として身につけていくのか、(3)その際、親・家庭・地域社会などは個人のジェンダー形成や規範化にどのような影響を与えているのかについて、a)個人の生活史に関する聞き取り調査と、b)地域社会の日常会話や日常の行動、行事、祭りなどの参与観察調査を通じて明らかにする。 B町でのフィールド調査は本務の多忙さで予定通り進まず、12月の2週間を予定していた調査を行うことができなかったため、第1次資料の蓄積が今年は少なかった。 ジェンダーの分析視覚を用いた既存資料の検討作業はほぼ修了し、「夫婦の仕事とその歴史的変化とジェンダー」、「民間信仰とジェンダー」、「女性と健康およびジェンダー」の3側面に関するテーマで検討を行い研究発表を行うことができた。 個々人へのライフ・ドキュメントやライフ・ヒストリーを中心とした聞き取り調査の進行としては、1時間半以上の丁寧な聞き取り調査を行うことができた男女が合計14人であった。現在、第1次資料のテープおこしを終え、「進学・就職と進路選択」「結婚」「養育」などの面に着目した分析をおこなっている。参与観察調査では、「日常会話や日常行動とジェンダー」との側面に着目したフィールドノ-ツ記録を続けている。 次年度8月頃からフィールドの全体的な分析を行う予定で、それまでは第1次資料収集に重点をおいている。
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