ヒトの癌発生には主として食事因子(35%)と喫煙因子(30%)など生活習慣が関与している。なかでもニトロソアミンは各種生物に発がん性を示し、臓器特異性を有し、食品のみならず、水、大気中にも存在すること(外因性ニトロソアミン)、および生体内で二級アミンと亜硝酸塩より酸性下で容易に生成し、さらにマクロファージの活性化に伴い、アルギニン由来の一酸化窒素からも生成すること(いずれも内因性ニトロソアミン)が指摘されている。外因性ニトロソアミンのモデル反応系を確立するために30種のアミノ酸(そのメチルエステル)に糖モルの5-ヒドロキシトリプタミンを加え、0.2M酢酸緩衝液(pH4)と0.9MNaNO_2を等量加え、37℃で60分間反応させた。反応終了後、過剰のNaNO_2を0.9Mスルフアミン酸アンモニウムで分解した後、S. typhimurium TA100を用いてAmes法で変異原性を検定した。その結果、2.5μmolあたり、cysteamineHClが2731、L-cysteineが2171、L-cystineが788の復帰変異コロニーを誘発した。そこで、これらの反応系をジメチルアミン-亜硝酸系とともにニトロソアミンのモデル系として用いることにした。一方、植物試料として、茶葉(緑茶、紅茶、黒茶、ポ-レイ茶)、沢ワサビ(葉、根茎)、西洋ワサビ(葉、根茎)より各抽出物を調製したのち、フェントン試薬-チオバルビツール酸法により抗酸化活性を検定したところ、強弱があるもののいずれも陽性を示した。そこで、ビタミンCおよびビタミンEを陽性対照物質として上記植物抽出物を先のモデル反応系に添加して、変異活性の変化を調べた。茶葉が最も強く変異原性を抑制し、沢ワサビ、西洋ワサビ抽出物にも抑制効果を認めた。現在、各反応系についてニトロソアミン生成量を検討しているが、これらの実験結果は、植物成分がニトロソアミンの生成を抑制している可能性を強く示唆するものであった。
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