先に我々は各種コレステロール酸化物の中で、cholestane triolが小腸上皮細胞にたいして、強い細胞毒性を示し、細胞の増殖を抑制し細胞死を引き起こすことを明らかにした。そこで、cholestane triolの作用メカニズムについてさらに詳細に検討したところ、triolが細胞毒性を示す場合は、培養液中に少量のFCSが存在することが必須であることが明らかとなった。FCS中の細胞毒性発現に関与している成分について検討したところ、分子量は比較的大きいことが示されたため、従来酸化コレステロールの毒性発現との関連が示唆されているLDL、HDL等のリポタンパク質について検討を行ったところ、これらのリポタンパク質はcholetane triolの毒性発現には関与していないこと、またその因子は耐熱性であることが示唆された。さらに各種血清についても検討したところ、成牛の血清では毒性の発現が弱まることが示され、特に胎児の血清に多く含まれる何らかの物質がtriolの毒性発現に関与していると考えられた。また、triolによる細胞死の直接の原因は細胞膜の損傷によるものと考えられた。これらの成果は論文として印刷中である。 本研究のもう1つの目的であるMCTの小腸上皮細胞に及ぼす影響について、また食品の加工中におけるコレステロールの酸化とMCTとの関係等について鋭意研究中である。 また、コレステロール酸化物の肝細胞に対する影響については、各種コレステロール酸化物の中で最も細胞毒性の強かった7-ketocholesterolの作用メカニズムについて検討を行った。7-ketocholesterolによる細胞毒性の発現には酸素ラジカルやNOラジカルの関与が示唆されたが、これらは、おそらく酸化コレステロールの細胞膜への取り込みによる細胞膜の流動性の変化によって引き起こされた細胞内環境の恒常性の乱れによると考えられた。7-ketocholesterolによる細胞毒性は、特にビタミンEの添加によって阻止されることが示された。これらの成果は2つの論文にまとめた。
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