1.コレステロール酸化分解のメカニズム 先に我々はコレステロール酸化物の細胞毒性について、培養細胞を用いて研究を行い報告を行った。しかしながら、調理等の加熱過程で、食物中のコレステロールが共存物質の影響をうけながらどのように酸化分解されているのかはほとんど明らかにされていない。そこで、コレステロールを酸化分解に、共存物質としての金属イオンと脂肪酸がどのように影響するのかをin vitroでモデル実験を行った。その結果、脂肪酸のうち、オレイン酸メチル、ステアリン酸メチルは、加熱初期ではコレステロールの酸化を抑制することが示された。一方、金属イオンの中で、銅イオンは脂肪酸の存在の有無に関わらず、コレステロールの酸化分解を抑制することが示され、鉄イオンの場合は、脂肪酸が存在すると、コレステロールの酸化分解を促進することが示された。生成されたコレステロール酸化物の種類および量は、コレステロールの分解率とは無関係でほとんど同じであった。 2.MCTの小腸上皮細胞に及ぼす影響 ラット培養小腸上皮細胞にC6からC12までのMCTおよび脂肪酸を添加したところ、添加濃度、添加方法も検討したが、培養初期からこれらMCTおよび脂肪酸を加えると細胞死が生じうまく細胞が増殖しなかった。そこで、培養5日目にこれら脂肪酸を添加してみたが、やはり濃度依存的にまた経時的に細胞死が生じることが示された。培養液中のLDH活性を測定したところ、LDH活性の上昇が認められ、細胞死は細胞膜の破壊が原因と考えられた。現在、in vitroでの実験条件を再検討しているところである。
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