女性の骨にとって、エストロゲン分泌量の減少が大きい閉経周辺期および閉経期の骨代謝は特殊な状況を示すものと思われる。そこで閉経後の骨量減少を押さえる方策を探るため、地域健康女性255人(20歳以上)を閉経前後で高骨密度群(未閉経72人、既閉経53人)、低骨密度群(未閉経75人、既閉経55人)に分類し、骨量(DXA法)と骨代謝マーカー、食事、その他との関連をみた。 (1) 未閉経・低骨量群のBMDは既閉経・高骨量群とほぼ同じであった。 (2) 未閉経、既閉経の別にかかわらず高骨密度群では体重・体脂肪率・LBMが低骨密度群より高く(P<0.01)、b-ALP活性、TR-AP活性は閉経者が未閉経者より高かった。また閉経者のb-ALP活性、TR-AP活性は高骨密度群で低骨密度群より低かった(P<0.01)。 (3) 閉経者の初潮年齢は、高骨密度群で低骨密度群より低かった。 (4) 未閉経低骨密度群、既閉経高骨密度群・低骨密度群では骨量に加齢の影響がみられた。 (5) 未閉経低骨密度群では、欠食・間食・夜食・外食頻度が、未閉経高骨密度群および既閉経者より多かった。 (6) 未閉経、既閉経の別にかかわらず、低骨密度群は食生活・食習慣等の環境因子の影響を受けやすい (7) VDR遺伝子Exon2における多型で検討すると、腰椎骨密度(L2-L4)は、未閉経群ではmm>Mm>MM型(P<0.01)、既閉経群ではmm>MM型(P<0.05)であった。 (8) リスクの高いMM型の骨密度は未閉経群では小学校時の牛乳摂取量と、既閉経群では中学校時・成人後の牛乳摂取量と正相関した。 (9) 対象全体の骨密度を基準変数、単相関係数の高い因子を説明変数とし重回帰分析を行なうと、現在の食物摂取状況より、過去の特に骨急成長期の牛乳摂取頻度の方が骨密度によく関連した。 (10) 体位・体組成のうち身長、体重といった身体の大きさを表す量はよく骨密度と関連するが、体重の構成成分としては、除脂肪量よりも体脂肪量の方がよく骨密度に関連する。
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