昨年度は5週齢ラットに卵巣摘除術を施し、エストロゲン(E_2)投与群と非投与群に分け8週齢まで短期飼育し、その後尾部懸垂を行った実験であったので、本年度は更に長期のエストロゲンの低下による影響を検討した。即ち、骨代謝回転の活発な時期の5週齢に卵巣摘除を行って18週齢まで飼育し、長期のエストロゲン分泌の減少が、廃用性筋・骨萎縮の発症に及ぼす影響を検討した。【方法】5週齢雌ラット24匹に卵巣摘除を施し、12匹はestradiol dipropionate(E_2)200μg/体重100gを7日毎に投与し、18週齢まで飼育した。残る12匹にはE_2の替わりに生理的食塩水を投与した。生理的食塩水のみを投与した群を卵巣摘除群(Ovx)とし、E_2を投与した群をE_2群とした。両群をそれぞれ非懸垂群(N)及び懸垂群(S)に分け、計4群で実施した。【結果】Ovx群の尾部懸垂開始前の体重はE_2群より有意に増加し、Ovx群471.4±12.9g、E_2群289.4±3.8gであった。S群の鮃筋及び腓腹筋の湿重量は、いずれも各々のN群に比べ有意に低値を示した。一方、8週齢OVX-N群のみに認められた大腿骨湿重量の減少は18週齢Ovx-N群では認められなかった。しかしg重量あたりの骨中Ca、Pi、ハイドロキシプロリン含量は懸垂による差は認められなかったが、Ovx群でE_2群に比べ低値を示した。また尿中ピリジノリン排泄量は、懸垂の有無に関わらずOvx群でE_2群より多かった。【結論】5週齢Ovx群ラットへの13週間E2投与は7日間の尾部懸垂によりOvx群E_2群共に筋萎縮の発症を引き起こしたが、両群共に後肢骨重量の萎縮は認めなかった。しかし、E_2群で骨基質の成分であるハイドロキシプロリン量が高く、また尿中へのピリジノリン排泄量が低いことからエストロゲン投与が骨吸収を抑制することが示唆された。
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