研究概要 |
鶏卵,牛乳は乳幼児の二大アレルゲンであり,これら食品素材はそのまま利用されるばかりではなく,各種の加工食品にも利用されているがそれらの調理・加工品のアレルゲン活性はほとんど調べられていない.そこで,本年度は卵白の代表的なアレルゲンであるオボムコイドに対する特異抗体を用いて,加熱や泡立ちによる調理過程における卵白の抗原性の変化を検討した.次いで,小麦粉を主原料とする加工食品としてパンを調製して卵白中主要アレルゲンであるオボムコイドの抗原性の変化を検討して,次のような成果を得た. 1.卵そのものの料理としてゆで卵,メレンゲおよび卵豆腐を調製して,それぞれから塩溶性画分を得た.抗オボムコイド抗血清を用いたimmuno blottingおよび競争阻害ELISA法でオボムコイドのantigenicityを調べた.加熱操作だけのゆで卵ではリゾチームやオボトランスフェリンは速やかに不溶化するもののオボムコイドは12分加熱後もその約75%が塩溶性画分から検出された.わずかではあるが,オボアルブミンも残存した.卵白を泡立てて調製するソフトメレンゲからは生卵と同程度のオボムコイドが検出された.ソフトメレンゲを100゚C,60分加熱して調製したハードメレンゲからもオボムコイドは検出された.0〜1.6%の塩溶液を用い,100゚C,8分蒸気加熱して調製した卵豆腐でも塩濃度に関係なく,オボムコイドのantigenicityが認められた. 2.小麦粉に卵白を加えてパンを調製した.ニーダーによるこね時間を0〜80分とし,次いで一次発酵,二次発酵を行った後100〜200゚Cで各時間焼いて各過程におけるアレルゲン活性の残存性を調べた.80分までのこね時間までもオボムコイドのアレルゲン活性は全く変化しなかった.また,一次および二次発酵でも抗原性はわずかに減少したにとどまった.しかし,焼き時間,焼き温度によってはオボムコイドの抗原性を著しく減少させることが出来た.
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