<研究の目的>繊維や河川の汚れ除去に漂白剤の役割は重要である。しかし近年、塩素系漂白剤がダイオキシン生成の一因となることが指摘され、環境保全の面から酸素系漂白剤の利用が注目されている。本研究は繊維や環境にやさしい酸素系漂白剤の有効利用のために、できるだけマイルドな条件で活性化でき、取扱いやすく、また、回収が可能な諸種のポルフィリンの金属錯体を新たに合成し、触媒として使用することを試みた。 <実験方法>過酸化系漂白剤には過酸化水素を、触媒にはポルフィリンの金属錯体として種々の分子量を持つポリエチレングリコールと結合したマンガンポルフィリン誘導体または、ポリアクリルアミンと結合したマンガンポルフィリン誘導体を、被漂白物質にはC.I.Acid Orange 7およびC.I.Basic Orange 33を用いた。触媒の粉末化には凍結乾燥機(東京理科機器SYS1007)を用いた。分光光度計(島津製作所UV-160)を用い、色素の吸光度変化から擬一次速度定数(k_<obs>)を算出し、色素溶液の退色速度について検討した。 <結果>pH8.0という温和な条件で漂白を行った結果、過酸化水素のみではほとんど色素の退色が見られなかったが、ポリエチレングリコールと結合したマンガンポルフィリン誘導体存在下では色素の退色が促進された。ポルフィリンの骨格をフッ素化したマンガンポルフィリン誘導体よりも塩素化したマンガンポルフィリン誘導体のほうに大きな効果が認められた。また、ポリエチレングリコールと結合したマンガンポルフィリン誘導体を触媒とした過酸化水素による漂白が酵素類似の反応として取り扱えることがわかった。そして、その退色速度を速度論的に取り扱った結果、ポリエチレングリコールの分子量によって触媒の活性化状態が大きく異なることが認められた。また、ポリアクリルアミンと結合したマンガンポルフィリン誘導体の効果は本条件下では認められなかった。
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