研究概要 |
筆者は、きのこに含まれる糖脂質に着目し、数種きのこの糖脂質について構造解析し、その生理活性について検討した。きのことしてマイタケ(Grifora frondosa:新潟産)を用い、Folch法に従い脂質を抽出した。抽出脂質はクロロホルム:メタノール:水(65:25:4by vol)及びクロロホルム:メタノール:酢酸(65:25:10by vol)の展開溶媒にて二次元薄層クロマトグラフイ-(TLC)を行い、TLCで分画後、糖脂質を単離精製した。単離した糖脂質について構造解析を行なった結果、MGL-1はグリコースを構成糖とし、d_<18:0>の長鎖塩基を持ち、脂肪酸として2-ヒドロキシステアリン酸を含有する質量数m/z742(M-H)^+のセラミドモノヘキソシドであることを確認した。MGL-2については糖鎖部分に違いが見られたが、まだ構造を明確にするには至っていない。さらに、MGL-1,2,3について生理活性を検討するために免疫の指標となるヒト好中球および単球に対する貧食活性を調べた。その結果MGL-2において0〜0.2μg/mlの濃度範囲において貧食活性の促進が認められた。貧食活性をコントロールに対する相対値で表すと、25μg/mlの濃度において好中球では176であり、単球では443となり、特に単球に対して著しい促進効果を認めた。しかし、MGL-1およびMGL-3では変化はなかった。さらに、細胞内における殺菌作用を明確にするために、好中球に対する食胞融合能(P-L fusion)について調べた。その結果MGL-2では、P-L fusionについても顕著な促進を示した。このMGL-2の構造が酸性基を持つ酸性スフィンゴ糖脂質であることが予想されるので、酸性スフィンゴ糖脂質の代表的なスルファチド及びガングリオシドについてヒト好中球の細胞内貧食機構を調べて比較検討し、構造的な類似性を検索した。その結果ガングリオシドとよく似た挙動を示し、新しい知見を得た。今後、細胞内スーパーオキサイドアニオン産生の増強がないこと。また、MGL-2を添加した後のLPSに対する影響をも調べ、LPSの貧食作用が賦活されるかどうか検討したいと考えている。またMGL-2の構造も明確にしたい。
|