研究概要 |
著者は、きのこに含まれる糖脂質に着目して構造解析し、現在、その生理活性について検討している。きのことしてマイタケ(Grifora frondosa:新潟産)を用い、Folch法に従い脂質を抽質した。抽出脂質はクロロホルム:メタノール:水(65:25:4by vol)及びクロロホルム:メタノール:酢酸(65:25:10by vol)の展開溶媒にて二次元薄層クロマトグラフィー(TLC)を行い、TLCで分画後、糖脂質を単離精製した。構造解析は、IR,FAB/MS,NMR分析により行なった。さらに、この糖脂質について生理活性を検討するために免疫の指標となるヒト好中球及び単球に対する貧食活性について調べた。カバースリップ上で前培養した好中球および単球に各濃度に調製した糖脂質を加えインキュベーションしメチレンブルーで染色後、顕微鏡下で貧食活性を調べた。食胞融合能の測定は、好中球のライソゾームにアクリジンオレンジをプレラベルし、その後貧食能と同じように反応させ蛍光顕微鏡にて食胞融合能を調べた。食胞融合能は、100個以上の好中球を観察し、1個当たりの好中球内に融合をおこしている細菌数に融合が見られた好中球の割合を乗じて算出しfusion indexとして評価した。その結果、3種類の糖脂質(MGL-1,2,3)を見出し、MGL-2においてヒト好中球・単球の貧食活性及び食胞融合能に対して顕著な促進活性を示した。しかし、MGL-1およびMGL-3では変化はなかった。さらに、食胞融合能が促進して殺菌が進むとスーパーオキサイドアニオン(O_2^-)が産生されるのでMGL-2について検討した結果、O_2^-産生が変化が認められなかった。又、細菌毒素であるリポポリサッカライド(LPS)の刺激に対して、MGL-2がどのような影響を及ぼすのかも検討した。MGL-2はLPSによる貧食活性の阻害を軽減しLPSの毒性作用を除去することを認めた。以上の結果より、糖脂質MGL-2は免疫力を高め、貧食作用を賦活したので、薬理的に利用できるのではないかと考えられた。MGL-2の構造は、まだ明確ではないが、推定構造は糖鎖部分はグルクロン酸であり、ステロール核に脂肪酸が含有しているのではないかと推定している。
|