要介護老人の快適な生活および幸福度を、衣服サイドより追求するために、本調査の対象者は、特別養護老人ホールおよびグループホームの老人とした。現在までに得られた結果は次のとおりである。 1)ドイツにおける実態調査:特別養護老人ホームおよびグループホームにおいて、「寝たきり老人」の存在は見られなかった。在宅介護における介護保険の導入は定着していたが、財政上の種々な問題も提起されていた。要介護老人の支援システムは確立されており、精神的介護も非常に優れたものがあった。ボランティアも盛んであり、若者が積極的に要介護老人の世話をしていた。要介護老人の衣生活は、穏やかではあるがおしゃれ感がみられ、アクセサリー類も使用されていた。高齢期に至る生活の美意識が影響していると考えられた。 2)わが国における実態調査:特別養護老人ホームにおける衣生活は、問題点が多いことが、予備調査の結果明らかとなった。衣服のライフサイクルにおける<購入-(着用-洗濯-保存)-廃棄>の各段階のうち、廃棄を除いて、主体的には衣生活は経営されていない。衣服は自己表現の有効な手段であるが、要介護老人の場合、衣服による自己表現は、購入の段階から困難を伴っている。この点を解決するため、次年度では、より詳細な調査を行いたいと思っている。 3)快適な衣服の検討:介護服の使用に関しては、賛否両論であり、私自身、結論を出しえていない。本年度は、介護服の快適性を検討するために、着用実験を試みた。衣服の快適性に関しては、次年度に、衣服内温湿度(デジタル式温湿度計を使用。本学備品)等を測定し、科学的に検討する予定である。
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