本研究は、要介護老人の快適寝環境に及ぼす衣服の影響を検討したものである。著者は、既に、平成6年度〜7年度の科学研究費補助金により、要介護老人の快適な生活および幸福度を実験的に追究し、「家族」および「人間的尊厳」をKeywordとする一連の報告をした。本研究は、これらの先行研究を更に発展させるために行われたものである。要介護老人の快適な生活および幸福度を、衣服サイドより追求するために、対象者は、特別養護老人ホームおよびグループホームの老人とした。現在までに得られた結果は次のとおりである。 1)文献調査において、生活環境の諸問題は、介護者サイドからの問題点が大きく指摘され、要介護老人サイドの意見はほとんど述べられていない、という事実が指摘された。 2)衣服実態調査において、衣服のライフサイクルにおける<購入-(着用-洗濯-保存)-廃棄>の各段階のうち、廃棄を除いて主体的には行われていない、という結果が指摘された。 3)衣服実態調査において、25施設のうち16施設において(64%)、介護服の使用が認められた。 4)介護服、いわゆるつなぎ服の快適性について、素材、色彩、デザイン共、問題点が多いことが判明した。 5)諸外国の高齢者の衣服調査において、ひとり暮らしの高齢者は、ボランティアの助けを借りて、自立した生活を美しくおくっていた。
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