食物アレルギー発症機序に関する免疫組織化学的、超微形態学的研究

1997 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 08680070
• 研究機関: 中村学園短期大学
• 研究代表者: 松隈 美紀 中村学園短期大学, 食物栄養科, 助手 (40259669)
• 研究分担者: 藤田 守 中村学園大学, 家政学部, 教授 (60037471)
• キーワード: 食物アレルギー / 食物性抗原 / 高分子物質 / 消化管(胃・小腸) / 免疫組織化学 / 超微形態学 / 植物性レクチン

研究概要

食物アレルギー発症機序における初期的段階を詳しく解明する目的で本研究を行なった。平成8年度はラットの乳飲期、離乳期、の小腸を用い、高分子物質、種々のレクチンおよび食物性抗原が管腔側から粘膜上皮を通過し、粘膜固有層内へ侵入するか否かを免疫組織化学的、超微形態学的に検索を行なった。その結果は、平成8年度研究実績報告書に記載してある通りである。平成9年度は、平成8年度の実験を踏まえて乳飲期(母乳飼育群、人工乳飼育群)ラットの小腸、成熟期ラットの胃、小腸を用い高分子物質、種々のトレーサーおよび食物性抗原が管腔側から粘膜上皮を通過し、粘膜固有層内へ侵入するか否かを免疫組織化学的、超微形態学的に検索を行なった。
乳飲期(母乳飼育群、人工乳飼育群)ラット(生後14日目)の小腸管腔へ高分子物質および食物性抗原を投与し、免疫組織化学的、超微形態学的に検索を行なった。その結果、乳飲期(母乳飼育群)ラットの空腸では、吸収上皮細胞内および細胞間隙、さらに粘膜固有層内に反応産物が認められた。乳飲期(人工乳飼育群)ラットの空腸においては、管腔内および吸収上皮細胞の細胞頂部に僅かな反応産物が見られたが、細胞間隙および粘膜固有層内には認められなかった。
成熟期ラットにおいて、アルコール(25%,50%,)を投与すると、25%アルコール投与群では、胃と小腸(空腸)の上皮細胞に僅かながら障害が見られた。50%アルコール投与群では、同じ部位に強い障害がおこり、その部位から種々のトレーサーおよび食物性抗原が粘膜固有層内に侵入することが観察された。以上の結果より、乳飲期(母乳飼育群、人工乳飼育群)ラットにおいて、母体のアレルゲンが母乳中の抗体と共に空腸の吸収上皮細胞に取り込まれ、細胞内を通過し、粘膜固有層内へ侵入するこが示唆された。また、離乳期成熟期ラットにおいては、胃、小腸(空腸・回腸)の上皮層に障害が起った部位より、アレルゲンが細胞内を通過し粘膜固有層内へ侵入ことが示唆された。

研究成果

• [文献書誌] M.Fujita,R.Baba,T.Oshikawa and M.Miyoshi: "Relationship Between Endocytic Pathway and Cytoskeletons in Absorptive Cells of the Small Intestine of the Suckling Rat" Digestion & Absorption. 19・2. 86-90 (1996)
• [文献書誌] T.Oshikawa,R.Baba,M.Fujita and M.Miyoshi: "Apical Endocytosis of Lectin by Absorptive Cells of Suckling Rats Jejunum in vivo" Okajimas Folia Anatomica Japan. 73・5. 229-246 (1996)
• [文献書誌] 楠 喜久枝、藤田 守、松隈美紀、馬場良子、三成由美、田所忠弘、印南 敏、前川昭男: "カキの葉組織構造並びに食物繊維成分について" 日本食品保蔵科学会誌. 23・2. 65-75 (1997)
• [文献書誌] M.Fujita,R.Baba,M.Miki,T.Kai,S.Nozaki,and M.Miyoshi: "Apical and Basolateral Endocytic Pathways in Absorptive Cells of Suckling and Adult Rats Small Intestine in vivo" Digestion & Absorption. 20・2. 113-118 (1997)
• [文献書誌] R.Baba,M.Fujita,M.Miki,T.Kai,S.Nozaki,and M.Miyoshi: "Endocytosis by Absorptive Cells of Adult Rats Large Intestine in vivo" Digestion & Absorption. 20・2. 129-132 (1997)