研究概要 |
食物アレルギー発症機序における初期的段階を詳しく解明する目的で本研究を行なった。平成8年度はラットの乳飲期、離乳期、の小腸を用い、高分子物質、種々のレクチンおよび食物性抗原が管腔側から粘膜上皮を通過し、粘膜固有層内へ侵入するか否かを免疫組織化学的、超微形態学的に検索を行なった。その結果は、平成8年度研究実績報告書に記載してある通りである。平成9年度は、平成8年度の実験を踏まえて乳飲期(母乳飼育群、人工乳飼育群)ラットの小腸、成熟期ラットの胃、小腸を用い高分子物質、種々のトレーサーおよび食物性抗原が管腔側から粘膜上皮を通過し、粘膜固有層内へ侵入するか否かを免疫組織化学的、超微形態学的に検索を行なった。 乳飲期(母乳飼育群、人工乳飼育群)ラット(生後14日目)の小腸管腔へ高分子物質および食物性抗原を投与し、免疫組織化学的、超微形態学的に検索を行なった。その結果、乳飲期(母乳飼育群)ラットの空腸では、吸収上皮細胞内および細胞間隙、さらに粘膜固有層内に反応産物が認められた。乳飲期(人工乳飼育群)ラットの空腸においては、管腔内および吸収上皮細胞の細胞頂部に僅かな反応産物が見られたが、細胞間隙および粘膜固有層内には認められなかった。 成熟期ラットにおいて、アルコール(25%,50%,)を投与すると、25%アルコール投与群では、胃と小腸(空腸)の上皮細胞に僅かながら障害が見られた。50%アルコール投与群では、同じ部位に強い障害がおこり、その部位から種々のトレーサーおよび食物性抗原が粘膜固有層内に侵入することが観察された。以上の結果より、乳飲期(母乳飼育群、人工乳飼育群)ラットにおいて、母体のアレルゲンが母乳中の抗体と共に空腸の吸収上皮細胞に取り込まれ、細胞内を通過し、粘膜固有層内へ侵入することが示唆された。また、離乳期成熟期ラットにおいては、胃、小腸(空腸・回腸)の上皮層に障害が起った部位より、アレルゲンが細胞内を通過し粘膜固有層内へ侵入ことが示唆された。
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