戦時における日本の軍事研究の実態を新しい資料的条件のもとで問い直そうとする本研究において、初年度となる平成8年度は基本的な資料の収集と整理にあてられた年度であった。 本科学研究費補助金で購入する主要設備である『マイクロ・フィルム版 井上匡四郎文書』リ-ルNo.1〜134は10月に手元に届き、閲覧が可能となった。 また、11月と1月には東京に出張し、国立国会図書館憲政資料室所蔵のマイクロ・フィルム版GHO/SCAP Records を閲覧し、戦時研究に対する占領側の調査報告類のうち、それまでに報告者が所蔵していなかったものを複写・現像してもらった。 後者には、日本が第二次世界大戦中に製造、もしくは開発を目指した化学兵器・生物兵器、原子爆弾、レーダー、医薬品などの研究開発の実態に関する調査が多く含まれている。占領者はおもに(1)現地でのフィールド調査、(2)関係者へのフィードバックを含むインタヴュー、(3)アブストラクトの翻訳、といった方法により調査したようであるが、その内容的な吟味はこれからの課題となっている。また、主たる資料である前者の検討は予定より遅れ、この春より本格的な閲覧・整理の段階にはいろうとしている。 従って、現在は研究の中間的な成果公開はまだできない段階にある。
|