戦時における日本の軍事研究の実態を新しい資料的条件のもとで問い直そうとする本研究において、中間年となる平成9年度は基本的な資料の整理と資料の追加収集にあてられた年度であった。 本科学研究費補助金で購入した主要設備である『マイクロ・フィルム版 井上匡四郎文書』リ-ルNo.1〜134については今年度からも本格的に閲覧を開始し、重要箇所の現像とファイリング、それを通した事実発掘の作業を続けている。 また、9月には再度東京に出張し、国立国会図書館憲政資料室所蔵のマイクロ・フィルム版GHO/SCAP Recordsを閲覧し、戦時研究に対する占領側の調査報告類のうち、平成8年度の出張時には見いだしえなかった重要な調査・報告類を複写・現像してもらった。 現在までに収集した資料には、日本が第二次世界大戦中に製造、もしくは開発を目指した化学兵器・生物兵器、原子爆弾、レーダー、医薬品などの研究開発の実態に関する調査・報告の類が多く含まれている。現時点において、報告者は、日本における原子爆弾開発計画の実態と評価に関する諸資料の叙述の差異に注目し、その問題の検討を深めつつあるところである。しかしながら、資料が浩瀚、多数に及ぶため、その多くについての内容的な吟味はこれからの問題となっている。従って、現在は研究の中間的な成果公開はまだできない段階にあるが、本研究の完成年度となる平成10年度における研究成果の取りまとめの展望は開かれつつあると考える。
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