戦時における日本の軍事研究の実態を新しい資料的条件のもとで問い直そうとする本研究は平成8〜10年度、以下のような手順で実施された。 本科学研究費補助金の主要設備である『マイクロ・フィルム版 井上匡四郎文書』(雄松堂フィルム出版 1996年)は平成8年秋に手元に届き、閲覧が可能な状態となった。ただちに閲覧作業を開始し、技術院関係文書中「研究動員会議綴」などの資料に着目し、平成9年度にその現像とファイリングをおこなった。 もう一方の重要資料である、国立国会図書館憲政資料室所蔵のマイクロ・フィルム版GHO/SCAP Recordsについては、平成8年度に2回、9年度に1回それぞれ東京まで出張し、これを閲覧し、日本の戦時研究に対する占領側の調査報告類のうち基本的で、重要な調査・報告類を複写・現像してもらった。 これらの資料を比較対照し、戦時日本の軍部、および科学技術行政の側の関心と、占領者が警戒した戦時研究の項目との間には著しい違いがあることなど、本研究の一般的な結論を導くことができた。と同時に、日本における原子爆弾開発計画の実態と評価に関する諸資料の叙述の差異に注目し、その問題の検討を本研究の事例研究と位置づけ深めた(とくに、平成10年度)。 残念ながら、資料が浩瀚、多数に及ぶ未整理なものであるため、その整理に時間をとられ、研究の中間的な成果公開はできず、いきなり『科学研究費補助金研究成果報告書』で研究成果をまとめて報告することとなった。
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