1.目的:剣道用具が原因と思われる事故の発生を未然に防止し、青少年の体格・体力の向上さらには国際化による外国人選手に対応すべく、より安全性の高い剣道用具の開発や安全性からみた今日的な規格値の作成が急務である。本研究は、小学生から大人までの剣道競技者の打撃力を測定し、その実態的・基礎的資料を元に、年齢、性別そして技能差を考慮にいれた緩衝性能の高い剣道具布団材料の規格値を作成するものである。 2.方法:自作による打撃力測定装置(キスラ-社製3分力測定用ロードワッシャー:9067型使用)を用いて、剣道を行っている小学生(男子201名、女子26名)、中学生(男子27名、女子21名)、高校生(男子95名、女子98名)、婦人(102名)そして大学生(男子10名、女子10名)そして成人熟練者(7名)を対象にして、正面および小手打撃によって発生する打撃力(3分力)の測定を行った。布団は一分五厘刺しとし、試技は各動作について各自3〜5回とした。 3.結論:(1)各年齢層毎の小手打ちと面打ちの打撃力は、若干面打ちの方が大きいが顕著な差が見られないことから、小手および面布団部の緩衝性は同等とすべきである。 (2)打撃力は小学生男子の打撃力はその他の対照群に比較して平均で約75〜80%の打撃力である。したがって、小学生用として布団部芯材を変える場合には、この値を考慮すべきであるが、個人差や打撃動作様式の相違によっては成人と同等の打撃力も発生することから、安全面からは限りなく成人と同等の緩衝性を有することが望ましいと考えられる。 (3)男女間の打撃力の比較をすると、各年齢層において女子の方が平均値で10〜20kgf小さくなる。しかし、同様の理由から、男子と同等の緩衝性を確保する必要性がある。 (4)布団部芯材の種類や構造の相違による緩衝性能の基礎的資料を補填する必要がある。
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