高齢者の健康・体力に関する基礎的研究として、先ず安全性及び信頼性等を考慮し、体格・体力測定項目を選択した(体格11変量、体力(筋機能、肺機能、関節機能及び神経機能)13変量)。次に、高齢者の健康調査票及び健康・体力に影響を及ぼす生活条件調査票を作成するため、理論的妥当性を考慮して各領域から各々26項目、38項目の調査項目を選択した。生活条件調査は日常生活状況、仕事状況等の5領域、健康調査は呼吸系、消化系等の9領域から構成されると仮定した。体力測定が実施可能な高齢者を対象にこれら作成した測定・調査を実施した。体力テストの信頼性、体力の加齢に伴う変化や因子構造の検討及び健康・体力と生活条件の関連等資料の解析結果、以下の知見が得られた。 1.(1)テストー再テスト法により信頼性を検討した結果、選択した高齢者のための体力テストの信頼性は高い。(2)男女における体力構成因子の類似性は高く、高齢者における体力因子構造の性差は少ない。(3)高齢者における運動の実施は、加齢に伴う体力の低下を遅延させる効果があり、特にその効果は女性高齢者において顕著である。2.(1)自覚的健康度と体力の関連は低く、体格との関連が高い。(2)自覚的健康度得点が高い者は低い者よりも生活条件が程度の差こそあれ良好な状態にある。3.(1)体力に影響を及ぼす生活条件の単独的複合的関連を検討した結果、年齢、現在の運動習慣の有無、社会的活動の参加状況及び間食の摂取状況が男性高齢者の体力に影響を及ぼす要因である。特に、運動習慣、社会的活動の参加及び間食の摂取に関する生活条件は、改善可能な条件であり、これらの生活条件の改善は体力の加齢に伴う低下を遅延させる効果があると推測される。今後は、多変量解析を駆使してより詳細な検討を加えてこれらの研究資料を取りまとめ、論文発表を行う予定である。
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