研究概要 |
高齢者の健康・体力に影響を及ぼす生活諸条件の検討を行うために,理論的妥当性を考慮して各体力領域から体力パフォーマンステストを,また,自覚的健康,及び生活状況調査項目を選択した。まず,高齢者における体格・体力の因子構造を明らかにすると共に,その性差及び加齢に伴う変化を検討した。次に,横断的資料に基づき,自覚的健康と体力及び生活状況の関係を検討した。また,基礎体力と健康状態,日常生活活動,及び食生活生活との関係についても検討し,基礎体力に関与する生活諸状況について考察を行った。以上の検討から新たに以下のような知見が得られた。1.(1)体格因子として,長育,量・周育及び体脂肪の3因子が解釈され,男女とも量・周育及び長育は加齢と共に小さくなる。(2)体力因子として,筋力,四肢の敏捷性,平衡性及び柔軟性の4因子が解釈され,男女とも加齢に伴い低下する。(3)高齢者における筋力や平衡性は,四肢の敏捷性及び柔軟性より加齢による低下の程度が大きい。2.(1)自覚的健康度と柔軟性因子にのみ有意な関係が認められる。(2)自覚的健康度とBMI及び年齢間に有意な関係は認められない。(3)精神的ストレスによる苛立ちが無いことや就寝前に食事をとらないこと,あるいは社会的貢献やそれに伴う身体活動などの生活状況が自覚的健康感に好影響を及ぼす。3.(1)健康状態,日常生活活動及び食生活の各生活状況は複合して基礎体力に影響を及ぼす。(2)運動習慣,過去の病気や怪我による障害の有無,就寝時間及び年齢は基礎体力の低下に大きな影響を及ぼす。(3)基礎体力は加齢に伴い低下するが周1〜2回程度の運動は加齢に伴う体力の低下を遅延させる効果がある。(4)60歳代と70歳代では基礎体力に及ぼす生活諸条件の影響が異なる。また,一般在宅高齢者及び障害を有する施設入居者を対象とし,日常生活動作を評価する調査票の作成を試み,在宅高齢者の日常生活動作と生活諸状況との関係も検討した。
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