中枢神経細胞の運動性変性予防と回復促進に関する運動処方作りの基礎的研究

1996 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 08680109
• 研究種目: 基盤研究(C)
• 研究機関: 名古屋工業大学
• 研究代表者: 藤墳 規明 名古屋工業大学, 工学部, 教授 (60101268)
• 研究分担者: 藤墳 規明 名古屋工業大学, 工学部, 教授 (60101268)
• キーワード: ラット海馬体 / 神経細胞変性 / 持久的水泳運動 / 酸素分圧

研究概要

雌ラットに最大酸素摂取量の60-80%に相当する持久的水泳運動を6-12週間,トレーニング形式で負荷すると、海馬体神経細胞に組織化学的変性が起きることをこれまでに報告するとともに、その変性が運動中、および運動後に発生する低酸素・低グルコース症による可能性を強く示唆する研究結果を得た。そこで、本研究は、雌ラットの海馬体を対象に、運動強度の異なる持久的水泳運動を負荷した時の運動のおよび運動後にわたる酸素分圧の経時的変化を調べ、低酸素分圧を引き起こす運動強度を推察した。
成熟雌ラット24匹を4グループに等分した。第一グループには体重の5%、第二グループには体重の2.5%に相当する重りを負荷した。第三および第四グループは無加重とした。いずれのグループにも課題前に1時間の安静期間を与えた。その後、第一、第二、第三グループには2時間の水泳運動とそれに続く2時間の安静を課した。第四グループには4時間の温水での安静を課した。水泳は、32-34℃の温水プールで行わせた。酸素分圧の測定は、慢性クラーク電極を海馬体に挿入し連続測定した。電極の挿入位置は、測定後、直ちに凍結切片にて同定した。
5%の重りを負荷したグループでは、水泳運動開始数分後から連続的に酸素分圧が減少しはじめ、運動終了10分前から2時間の運動後安静期間中、運動前の安静値の約60%値っまで低下した。これに反して、2.5%の負荷グループでは、運動中、安静値に比べて約60%の高い酸素分圧値を示し、運動終了後の安静期には運動前の安静値に戻った。無負荷運動(第三)グループおよび安静(第四)グループでは、課題負荷中、有意な変化を示さなかった。これらの結果は、軽い運動負荷が海馬対領域の酸素分圧を上昇させる。すなわち、血流を昴進させる働きがあることを示唆すると同時に、中程度以上の長時間運動負荷が低酸素条件を中枢、特に海馬体にもたらすことを示した。今後、運動後の低酸素状態を引き起こす要因について解析し、ストレス性神経細胞障害の防止の手だてを提示したい。

研究成果

• [文献書誌] Nakai,N.: "Exercise training prevents muturation-induced decrease in insulin sensitivity." Journal of Applied Physiology. 80(6). 1963-1967 (1996)
• [文献書誌] Yoshimura,A.: "Glycegen depletion of the intrafusal fibers in a mouse muscle spindle during prolonged swimming." American Journal of Physiology. 271. R398-R408 (1996)
• [文献書誌] Nakai,N.: "Activities of liver pyruvate dehydrogenase complex and 3-hydroxyaclyl-CoA dehydrogenase in sand rat (Psammomys obesus)." Life Science. 60. 51-55 (1996)
• [文献書誌] Taniguchi,K.: "The valine catabolic pathway in human liver : Effect of cirrhosis on enzyme activities." Hepatology. 24. 1395-1398 (1996)
• [文献書誌] Nakai,N.: "Effects of aging on the activities of pyruvate dehydrogenase complex and its kinase in rat heart." Life Science. (in press).
• [文献書誌] Murakami,T.: "Enlargement of glycogen store in rta liver and muscle by fructose diet and exercise training" Journal of Applied Physiology. (in press).
• [文献書誌] 伊藤文雄編: "名古屋大学出版会" クローズアップ生理学, 243 (1996)
• [文献書誌] 宮村実晴編: "新興貿易医書出版" 最新生理学, 404 (1996)