老化により骨格筋に萎縮が生じ、それにともない筋力の低下が起こる。ヒトの骨格筋は、大きな力を発揮したり、素早い動きを必要とする時に働く「速筋線維」と、持久的な活動時に働く「遅筋線維」に大別される。これまでの研究は、老化にともない「速筋線維」から選択的な萎縮が生じることを明らかにした。したがって、高齢期には、筋持久力の低下よりも瞬発的に最大努力で発揮できる筋力の低下が顕著になる。 本研究は、60歳代の女性を用いて、最大努力による膝関節の屈曲および伸展運動を12週間にわたって負荷し、運動を継続することによって老化にともなう「速筋線維」の萎縮を抑制できるかどうかを検討することを目的としている。 12週間の運動によって、最大努力による脚の屈曲力および伸展力に増大が認められた。特に脚の屈曲運動により発揮される筋力で運動の効果が顕著に認められた。 先行研究は、老化にともない大きな力を発揮したり、素早い動きを必要とする時に働く「速筋線維」で選択的な萎縮が認められると報告している。これは、老化により最大努力で発揮できる筋力が低下することを意味している。このような「速筋線維」の萎縮に対するメカニズムについては、老化にともない力仕事が少なくなり、「速筋線維」を使用する頻度が減少することによる廃用性の萎縮によるものと推察している。したがって、老齢期に「速筋線維」を使用するような運動を負荷すれば、筋力の発揮時に「速筋線維」が参加・動員され、老性筋萎縮や筋力の低下を抑制・改善できるものと期待される。本研究では12週間という短い運動期間を用いたが、「速筋線維」を参加・動員するような運動を負荷できたと考えられ、その効果が得られたものと結論される。
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