2年計画の2年目は、主にわが国の生涯スポーツ体系のうち、高等学校と大学の段階における体育の実態と生涯スポーツへの意識、制度、役割について考察した。また、英国については、現地資料の情報収集をインターネットを通じて積極的に行うとともに、1988年以降の教育改革の動向と学校体育の変容について主に考察した。 英国におけるナショナル・カリキュラムの導入と学校体育への影響は、学校体育のみならず英国のこれまでの生涯スポーツ体系、とくに学校期における地域スポーツクラブと課外のスポーツクラブとの関係について見直しを求めるとともに、中等教育資格修了試験(GCSE)との関係がより密接に両者に影響及ぼす状況になりつつあることが理解された。すなわち、英国の生涯スポーツ推進の柱である学校体育や子どものスポーツ全般においても地方の教育自治権の衰退と反比例して、実務的、資格取得志向的な内容の取り扱いがみられるようになってきているということである。1995年には、ナショナル・カリキュラムの改訂版が出されているが、その後の動向をみる限り、わが国の昭和30年代前半から高度経済成長期にかけてみられた技術認識学習への偏重と、集団スポーツの重視を通じた社会統合の象徴としてのスポーツの重視といった手段的発想がみられるようになってきている。 一方、わが国の学校体育は、生涯スポーツへの志向をますます強め、スポーツライフの創造的学習を目標化する方向を持つが、高等学校の生徒のスポーツ志向は各階層、場面でより一層複雑化し、大学と地域スポーツとの関連においても同様な傾向がみられる。これらの複雑な諸相をどのように生涯スポーツ体系に組み込みながら、多様な施策を展開していくのかが課題となっている。
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