研究概要 |
本研究の目的は,虚血性心疾患に関わる行動パターン,すなわち攻撃性,敵意,競争心,時間切迫感などの傾向が強いA型行動パターンの行動変容介入手段として、身体運動が果たす役割を調べることである.平成8年度においては,先の目的を遂行するため,横断的研究として,行動パターン,運動習慣,性の影響を心理的ストレス課題遂行中の生理的ストレス反応から調べた.まず,日常生活において定期的に運動を行っている男女大学生100名と行っていない男女大学生87名を対象として,JAS学生版(佐藤,1992)によって被験者の選定を行った.A型行動パターンの強い者(タイプA)および弱い者(タイプB),運動習慣の有無,男女の3要因から次の各6名の8群が被験者として選ばれた.1)男子・A・有習慣群,2)男子・A・無習慣群,3)男子・B・有習慣群,4)男子・B・無習慣群,5)女子・A・有習慣群,6)女子・A・無習慣群,7)女子・B・有習慣群,8)女子・B・無習慣群.被験者の生理指標は,米国Autogenic社製Biolob Systemを使用し,心拍数(HR)および皮膚温(ST)を同時に測定した.これらの測定は,センサー装着後,準備期間を経て,5分間の安静期(baseline),3分間の鏡映描写課題期(stress),および4分間の回復期(recovery)を通して行われた.その結果,群の交互作用に有意な結果を得,以下のことが明らかになった.1)タイプA者はタイプB者に比べて,心理的ストレス課題遂行中の心拍反応が大きかった.2)この傾向は,特に男子において顕著に現れ,運動習慣のない者の心拍反応がきわめて大きかった.3)皮膚温の結果においても,男子・タイプA者の反応の回復が遅かった.4)タイプAでしかも運動習慣のない者も,ストレス課題中の皮膚温の低下が大きかった.以上の結果から,特に男子のタイプA者において,心理的ストレス課題遂行へのストレス反応は大きく現れ,運動習慣の有無の影響がきわめて大きいことがわかった.
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