運動制御の階層レベルの特性には、フィードバック制御(エラーの検出とその修正機能)、適応制御(構造パラメータの変化に対する適応)、それに自己組織制御(構造変化による新しい機能の創発)などがある。[研究の目的]特にフィードバック制御から適応制御へ移行する過程に焦点をあて、フィードバック制御段階での系列パターンの過剰学習によって生じる、反応「ゆらぎ」の変動性から適応過程を評価するものである。[方法]大学生女子20名(年齢19歳〜22歳)の被験者に対して、6つの刺激提示ボックスとそれに対応する6つの反応キ-から構成された系列反応装置を用いて、フィードバック制御過程で251364の系列位置をもつ系列パターンを1系列1試行として、100試行追従させた。さらに、適応過程で系列の中間変更パターンである253146を50試行追従させた。[結果]1)フィードバック制御段階では、20名の被験者中17名がその後半段階を見越し反応で応答した。残りの3名は正反応で応答することが判明した。2)フィードバック制御過程での過剰学習で発現した見越しの反応時間のゆらぎの変動性から、変動性の大きい者と小さい者に分類した。その結果、変動性の大きい者がそうでない者よりも、系列位置の変化に対する適応制御が優れていた。3)これらの結果から、系列パターンの過剰学習はその系列を秩序づける見越しの反応のゆらぎを増幅させ、反応の冗長性が変化を処理するための余裕を生起させていることが明らかになった。
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