全ての運動は運動神経終板からの興奮が筋細胞に伝達されることから開始される。この興奮はT管に伝達され、さらに未知の機構により筋小胞体(SR)からカルシウムが放出される。T管-SR間の情報伝達を主体としたこれらの一連の過程は興奮収縮関連と呼ばれ、筋収縮を調節する極めて重要なステップである。老化により萎縮が起こった骨格筋における機能不全を興奮収縮連関の機能から検討しようとする試みは行われず、萎縮した骨格筋における筋細胞内膜系の構造がいかなる特徴を呈するかは全く不明である。本研究では特に、加齢に伴い機能不全を起こした萎縮筋の胞内膜系及びカルシウムチャンネルにおける構造的上の変化を可視化して観察し、萎縮筋の機能的変化と構造的変化の関連性を明らかにすることを目的とした。老齢ラット(1年齢及び2年齢)の下肢骨格筋に対する不活動並びに走行トレーニングの影響を検討し、加齢に伴う活動量の減少に依存する骨格筋の機能低下が身体活動の増加によって改善されるか否かを検討した。不活動に伴い骨格筋は萎縮し、筋細胞内膜系に形態的変化が生じた。4週間のギブス固定によりT管の走行が乱れ、SRの構造破壊も観察された。これらの形態的変化は発生の初期段階に見られる形態的特徴に類似しており、特に長指伸筋において顕著であった。不活動の継続に伴いトライアドの数が減少し、2本のT管を3つのSR終末漕が挟む特殊構造体数が増加した。トレーニングはこれらの退行性変化を抑制し、その効果は特にヒラメ筋で顕著であった。加齢に伴う骨格筋の構造及び機能的特性の退行性変化は主に速筋に生じ、トレーニングによる退行性変化の軽減は遅筋に観察されたことから、実際に負荷する運動の強度と時間が特に重要であり、その組み合わせによっては加齢に伴う骨格筋の退行性変化を十分軽減できるものと推察された。
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