本研究の目的は、大学における教養としての体育学関連コースの授業内容の充実をめざして、(1)コンピュータ画像を活用して、身体・スポーツ文化論の視聴覚教材を編むこと、および、(2)制作された視聴覚教材の質とその授業効果を、学生による授業内容の評価を通して調査することであった。 今年度は、身体・スポーツ文化の映像教材のためのシナリオ作りを、とくに「経験のしくみ」に関わる「語り」の世界に焦点づけながら文献研究的に行うとともに、限られた範囲の、世界の伝統芸能のビテオ録画と経験の語りに関わる資料の収集を行った。 その際に、「身体感覚の組み立て(身体のフォーマット化)」、「身体意識の階層性」、「身体性」、「神話性」、「物語性」、「わざと癒しの世界」、「身体運動の意味論」、「映像の力(イメージ性)」「スポーツのメディア性」を中心に基礎概念を整理することを試みた。 さらに次年度に向けて、映像教材のシナリオ作りを、物語や昔話における経験の読み解き方に学びつつ、研究代表者・分担者の先行研究、ならびに学会の研究成果をも参照しつつ、運動経験の意味と機能における文化論的視点から進めた。 実践の授業では、人間の運動経験を読み解く仕方に馴染むために、学生自身が自分の運動経験を記述化しつつ、それを語って見せるという試みを行い、学生と担当指導者が作製したシナリオの一部を映像化することも試みた。あわせて既成の映像フィルム(適宜長さを編集)なども活用しつつ、教材としての映像の成果や授業効果を評価するパイロット調査も行った。
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