本研究の目的は、近代日本において出版された女子体育書を歴史的に研究することである。女子体育書とは女子のための体育書、女子を対象とした体育書、女子体育の研究書等とした。女子体育書を体系的に整理し、年代別、項目別等の女子体育書目録を作成し、できるだけ現物にあたり、書の内容と著者の人物像についての解題を作成しようとするものである。 本研究は二年間で実施するものであり、第一年目の本年度は以下の研究を実施した。第一に、女子体育書の調査、閲覧をした。国立国会図書館所蔵書を中心として、女子体育書の現物の調査を実施した。明治、大正期の書については、ほぼ把握することができたが、それ以後については次年度に行う。第二に、既に発行されている各種文献目録から女子体育書を抽出した。使用した目録は、女子教育関係、女性問題関係、体育・スポーツ関係、伝記、ノンフィクション関係等多岐にわたる分野別のものと、「日本出版年鑑」等の年代別のものである。 本年度の研究により次のことが明かとなった。女子体育書は明治初期から出版され、女子の行う体育の拡大とともに次第にその出版は増大している。明治、大正期においては医学、教育、体育界からの出版が主であった。それに加えて、新聞社のスポーツ部門やスポーツ新聞社等のジャーナリズムが一貫して女子スポーツ書を出版してきたが、女子体育が教育現象から社会現象へと拡大するとともに、多様な立場から出版されるようになった。近年では、スポーツ書ではあるが、特に娯楽や、商業主義に立つ書の出版が増えている。女子プロレス関係書や有名女子スポーツ選手が書いたとしている伝記、エッセイ等がそれに該当する。このことは、体育を専門とする本研究者にとって、女子体育書を網羅する目録を作成することが非常に困難であることを意味する。 最終年となる次年度は、今年度の研究成果を生かして、女子体育書を遺漏なく収集したうえで、初期の目的を果たしたい。
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