研究概要 |
本研究は、静的足底屈運動に対する循環系応答が、強度の異なる静的掌握運動付加によってどのように変化するかを検討することにより活動体肢の増加に対する循環系の再調整の機序を明らかにすることを目的としている。健康な20歳代女性7名を被検者として、30%MVC強度の足底屈運動(P30)を3分間行わせて、その間の1′30″-2′30″に、15%MVCあるいは45%MVC強度の前腕掌握運動を加えた同時運動(H15P30,H45P30)およびコントロールとして単独のP30運動を行わせた。そして、大腿総動脈血流量を超音波Doppler法で、前腕および下腿の皮膚血流量をレーザードプラー方(レーザー血流計ALF21Ds,アドバンス)、前腕筋組織酸素飽和度を近赤外分光法を用いて、血圧、心拍数と共に測定した。その結果、単独のP30運動では、心拍数は70.9±3.8拍/分、平均血圧は94.3±2.8mmHgであたが、これに15%MVCの掌握運動を加えたH12P30でも両パラメータの変化はP30運動と相違は見られなかった。しかし、H45P30運動では、心拍数は79.8±3.0拍/分、平均血圧は103.8±4.3mmHgに上昇した。大腿動脈血流量は安静時に560±48ml/分であったが、P30では793±126、H15P30では794±111に増加し、H45P30では896±145ml/分とさらに増加した。しかし、血管コンダクタンス(血流量/平均血圧)はH45運動を付加しても有意な変化は見られなかった。前腕の組織酸素飽和度は、15%MVCではコントロールと相違はなかったが、45%MVC強度では有意に低下した。以上のように、45%MVC強度の前腕運動は組織酸素飽和度の顕著な低下を起こし、それによる血圧上昇のために、一定速度の足底屈運動時の大腿動脈血流量を上昇させる結果になったことが示された。すなわち、この強度の組み合わせでは、強度の高い運動による血圧上昇が他の体肢の血流量も上昇させることが明らかになった。
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