スポーツ集団はその集団の様々な要因によって、集団内成員の社会心理的な様相が異なる。しかし、競技スポーツ集団は目的が明確であることが多いので、その目的達成のために集団が構造化されていると考えられてきた。ところが、近年、スポーツにおいて何を達成するかが多様化してきている。そのことが、スポーツ集団そのもののあり方や、集団構造等に影響を与えているはずだが、その点についての研究は十分とはいえない。 本研究では、集団の成り立ちを規範という点からとらえ、集団成立の時間的な長さから規範生成の様子をさぐり、そのことが集団の凝集性等の集団内の成員の集団に対する認知にどのような影響を与えているかを観察と質問紙調査によって明らかにしようとしたものである。 対象は大学スポーツ集団に所属する女子競技者116名(4チーム)であった。この4チームは集団の存続年数では3つに分類された(一番短いチームは4年目であた)。集団内の規範は、存続年数に比例して多くなる傾向がみられた。集団の凝集性は成員の親密さ、チームワーク、役割の認識、集団への魅力の4下位尺度(本研究者作成)で測定した。親密さは差がみられなかった。役割の認識と集団への魅力は規範の量の一番多いチームが最も低い値を示し、チームワークは規範の量の最も少ないチームが高かった。 規範と成員の意識を考えると、大学生では規範が多すぎることに不満がみられた。また、最も存続年数の短いチームを練習・試合場面で観察してみると、目的意識がやや希薄であった。つまり、試合場面では勝負に熱中するが、練習場面では真剣さが低減するというように一貫性がないのである。ただし、専門的な指導者がいないということがそのような意識を形成している可能性もあり、さらに検討を加えたい。
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