本研究は幼稚園幼児を対象として、歩行動作の質的な変化と、足蹠形状の質的変化や重心動揺計や平衡性測定項目によって得られる量的な変化との間の関係を、3年間にわたって縦断的に分析したものである。平成8年度から3年間連続して測定を受けた幼児は41名(男児23名、女児18名)を対象として、足蹠形状、重心動揺、平衡性能力及び歩行動作の分析を縦断的に行った。 1.前年度までと同様に、重心動揺諸測度と平衡性能力測定項目においては、年齢とともに発達し、安定した立位姿勢を保てるようになり、年中児から年長児にかけての発達が特に著しい。また両者間では、年長児では統計的に有意な相関関係を示し、縦断的な分析においても同様の結果が認められた。 2.平沢の方法により土踏まずの形成群と未形成群に分類し、両群間の重心動揺及び平衡性能力を比較したところ、平衡性能力測定項目では年長男児において土踏まず形成群の方が有意に優れていた。また、重心動揺諸測度の多くは年長児以外では差が見られなかった。重心動揺パターンも前年度までと同じく、年齢や性に関係なくそのほとんどは「びまん型」及び「前後型」に分類できると思われた。しかし横断的及び縦断的分析では、年齢とともに「求心型」に移行する傾向にあった。 3.歩行動作については、歩行速度からその発達段階を区分したが、年少児から年中児にかけて歩行速度が速くなり、統計的に有意ではないが年中児から年長児にかけては身体各部位の動き方(歩幅、膝関節の角度等)に差異が見られる傾向にあった。歩行速度の縦断的な分析では、男女児ともに前年度に比べ有意に速くなった。
|